家に帰って

一説に、12月はお寺の偉いお坊さん(師僧)でも忙しく走り回らないといけないので“師走”と言うそうです。
新年に向けての大掃除、年賀状や御節の準備など何となく気分がソワソワしがちな月ですが、そんな中でも一番の行事はやっぱり12月24日の“クリスマス”でしょう。
寺子屋新聞に何とも似つかわしくない言葉ですが私が子供のころ、このお寺にもサンタさんはプレゼントを届けてくれました。
25日の朝、目覚めると枕元にちゃんとありました。
ここには来ないだろうと不憫に思ったのか、友達のお母さんから特別にお菓子をもらったこともありました。
親となった私にとって2回目のクリスマス、今年も我が家に小さなケーキを届けようと思います。
今月はそんな話の悠悠日記です。
カトリック教会の修道女「マザー・テレサ」を御存知でしょうか。
彼女は100を超える国、600を超える地域でハンセン病、HIV患者や死を待つ人のためのホスピス、児童養護施設などを建設し、生涯の全てを世界の貧しい人たちのために捧げた偉大な宗教者です。
それらの業績は国、宗教、時代を超え、今でも苦しみの中にいる方々に慈悲を与え続けています。
生前からその活動は高く評価され、世界の名だたる賞を受賞されています。
その中でもとりわけ有名なものは1979年に受けたノーベル平和賞ではないでしょうか。
彼女は同賞の晩餐会を断り、その費用を貧しい人のために使っていただけるよう懇願なさいました。
受賞後インタビューの中で、記者にこう尋ねられました。
「世界平和のために私たちはいったいどんなことをしたらいいですか」と。
仮に私が友達から同じ質問を受ければ何と答えるか。
おそらく両目を泳がせながら頭の中より仏教用語を探し出し、響かない模範解答を絞り出していたに違いありません。
彼女はその質問に「 “Go home and love your family.” 家に帰り、家族を大切にしてあげてください」と答えたそうです。
まずは手の届く家族を愛してあげなさい。
平和とうるおいのある家庭が築けたならば隣人を愛しなさい。
自分をそして家族を満たしてあげて、他人を愛する心を築いて下さいと、よく口にしておられたそうです。
生涯し続けた目の前の貧しい人、死にゆく人を救うということは、きっと彼女にしてみれば当たり前のことだったのかもしれません。
マザー・テレサの葬儀はインド政府により国葬として盛大に行われ、宗教の枠を超え各世界宗派の代表者が参列されました。
今年最後の“縁つながり”には初めて同じ“僧侶”であり、私の尊敬する大先輩でもある赤堀暢泰僧正に大変お忙しいなか執筆いただきました。
実を言うと今回の内容は2年半前、私の結婚披露宴の席にて赤堀さんにいただいた祝辞の内容を拝借し書き上げたものです。
この言葉はこれから家庭を築いていく私に授けてくださったものでありました。
それから子どもが生まれ歳月が流れ、いま改めて自己を見つめると………。
忙しいとけて、身近な大切な人から目を背けてはいないでしょうか。
家族を、身近な人を大切にしていると胸を張って言えるでしょうか。
私と同じく心が重くなった方はこの師走の12月がいい折、「今年もほんとうにありがとう」と声に出して感謝を伝えてみてはどうでしょう。

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