White lie (白い嘘)

誰も傷つかない悪意の無い嘘、良かれと思ってつく嘘のことを英語で“White lie(ホワイト・ライ)”と言うそうです。
日本語で言うところの“嘘も方便”に似た言葉でしょうか。
仏教では仏になるための10の戒め(十善戒)の中で“不妄言、不綺語、不悪口、不両舌”と4つも用いて言葉に対する善行を促しています。
日記を綴っている現在は6月13日、ブラジルワールドカップが開幕し、日本代表への期待が日増しに高まっていますが、前回大会から既に4年が経過した時間の早さには驚かされます。
前、南アフリカ大会では初めての子どもを授かり妻のつわりが激しく、開催中は静かに声を上げ応援していましたので、当時の事をよく覚えています。
またその頃、ワールドカップに因んだこんな話をある方から聞いたのを思い出しました。
12年前の日韓ワールドカップでは各国の代表が日本の各地でキャンプを貼り、練習に励んでいました。
戦術などが漏れないように練習は非公開にするのが一般的ですが、デンマーク代表は全て公開し、更に練習が終わると地元の子ども達とサッカー交流を行いサインなどにも気軽に応じてくれていたそうです。
「ごっついフレンドリーやで」。
こんな口コミで見学に訪れる人は日に日に増していきました。
ある時、親子がFWのトマソンという選手にサインをしてもらうべく順番を待っていました。
その番が来たものの、モジモジしていた少年は母に急かされながらポケットから学校の英語の先生に書いてもらった手紙を出しました。
そこにはこう書いてあったそうです。
「僕は小さい頃に病気にかかって口と耳が不自由です。
耳は聞こえません。話せません。
だけとサッカーだけはずっと見てきました。
デンマークのサンド選手とトマソン選手が大好きです。
頑張ってください」と。
その場にいた手紙の内容を知った方々は言葉が出ませんでした。
ところがトマソン選手はニッコリ微笑み聴覚障害を持つその少年と手話で会話をしようと試みました。
しかし手話は各国によって異なることが分かると通訳さんに日本語の文字を書いてもらい、その少年と筆談が始まりました。
「君はサッカーが好きですか」
「はい、大好きです」
「そうですか、デンマークを応援して下さいね」
「1つ質問があるんですが、どうして手話が出来るんですか」
「実は僕にも同じ試練を持つ姉がいます。その彼女のため僕は手話を覚えたのです」
その文字をじっくり読む少年に向かって彼はこう続けました。
「きみの試練は君にとってとても辛いことだと思います。
しかし君と同じようにあなたの家族もその試練を共有しています。
君は1人ぼっちでないということを理解してくれていますか」
この言葉に少年は黙ってうなずきました。
そして「分かってくれているならオーケー、誰にでも辛いことはあります。
君にも僕にも、そして君のお母さんにも辛いことはあります。
しかしそれを乗り越える勇気を持ってください」。
このやり取りを聞いていた母親の目には涙が溢れ、周りの方たちも涙していました。
そして最後に「今大会で僕は必ず1点は獲ります。
その姿を見て君がこれから頑張れるように僕は祈っておきます」と。
実際には4点もあげたトマソン選手は帰国の前に少年ともう一度会い、お互いに感謝を告げデンマークへ帰っていったそうです。
この聴覚障害を持つ少年との心温まる交流、実はフィクションなのです。
インターネットで話題になり拡散していったこの話をNHKが直接本人に確認したところ、「その話は知りません。
私は手話も出来ないし、1人っ子です」と答えたそうです。
親になる前にこの話を聞いた私は「楽しいことも辛いことも共有するのが家族なんだな」と改めて考えました。
嘘と分かった時はとてもショックでした。
しかしブログから始まったこの作り話、人々の胸中の琴線に触れる話、心に届く話でなければ広がりはなかったでしょう。
家族とは如何なるものか、話の核心はずっと私の心に残っています。
皆様にとっては如何でしょう。
White lie、それとも………。

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