インタビュアーの心得

「僕は人見知りやから」こう言うと友人から白い目で見られました。
「そんなはずは無いやろ?もし君がそうやったら99%の人間は人見知りに分類されるで」と。
これほど周りと自身の印象が違うこともあまり無いのですが、私は自分を内向的で引っ込み思案だと思っています。
30年来の友人に会う時でさえ部屋で身支度をしていると何故か緊張してしまいます。
異業種交流会などで知らない方ばかりだと、会話の糸口が見つからず1人になってしまい不安が全身を駆け巡ります。
最終的には1人になり「孤独も悪くない」みたいな考え方で自分を守り、帰りがけ公園のベンチで缶コーヒーを飲み1人の時間を満喫、“ホッ”として家に帰ります。
過度に緊張や人見知りをする人は自意識過剰じゃないか?とおっしゃる方がいました。
確かに「こう見られたい」という気持ちはありますが、そんな考えを抱く以前に緊張の波にさらわれてしまいます。
案外共感してくれる方は多いのではないかと思いますが、実は近頃その波がだんだんと穏やかになってきました。
その原因は、この寺子屋新聞であります。
左側の“縁つながり”の記事が出来上がるまでには2パターンあります。
1つ目は今回のように原稿を作成していただき掲載する方法、もう1つは私がインタビュアーになり面接取材をして記事に仕上げる方法です。
初めて取材をさせていただいたことをよく覚えています。
喫茶店に入りメモ帳片手に話を始めるものの、ただ漠然と「話を聞く」というだけでした。
しかも私が緊張してしまい「何か言いたいことは有りますか?どんなことが大変ですか?何か楽しかったことを話して下さい」随分と乱暴な質問をぶつけていました。
私が同じ質問をされたら沈黙するところですが、その方は丁寧に様々なお話をしていただき取材を終えました。
帰って書きなぐりのメモ帳を見返し文章に起こしてみるも原稿量の3割ほどしかない。
あとは記憶をたどり話を繋げるが、つぎはぎだらけで結局何を伝えたいのかさっぱり分かりません。
それをメールでお送りしたところ、しっかりとした文章に校正して返して下さいました。
「こりゃいかんゾ」と思い、インタビュアーについて調べてみると様々な心得を見つけました。
その1、インタビューの目的を考える。
今からの取材で何を話してほしいのか、自分はどんな情報を欲しいのかハッキリさせておく。
その2、その目的に合わせた質問を用意する。
いきなり核心を突く質問をしても答えることが出来ない。
その目的までのルートを何通りか考えておく必要がある。
その3、質問を多く準備しておくこと。
沢山の質問を用意しようとすれば、おのずと相手方のことをリサーチしておかねばならない。
以上のことを準備して取材を試みたところ様々な事柄を聞くことが出来るようになり、何よりインタビューが楽しくなってきました。
もちろん今でも上手く話をお伺い出来ている自信はありません。
しかしインタビュー中に、その方の人生の道を共に歩ませていただいているような何か不思議な気持ちになることもあります。
インタビュアーの心得で共通していること、それは相手を深く知ろうとすることです。
その方の人生の軌跡をたどり、輝く個性を知る。
大学を卒業して以降、僧分以外の方のお話を聞く機会にあまり恵まれませんでしたが、この新聞を通して沢山の方と縁が生まれました。
そして今の自分がいる世界とは全く違う価値観の世界を知ることができたこと、深く感謝しています。
今までは“お坊さんとして接しなければ”といった身丈に合わない高い下駄を履き、足もとがグラグラした緊張感に包まれていました。
しかしインタビュアーの心得で共通の“相手を知りたい”という気持ちが下駄の歯を低くしてくれ、心に巻き付いた糸をほぐしてくれています。
『一切の衆生はみなこれ吾が二親、師君なり』お大師さんが残された言葉です。
私にとって、あなたにとって、あらゆる人々が両親であり先生なのです。
まなざしを自分以外に向け感謝の心で接すれば緊張の厚い雲は消え、晴れ渡った秋の空のように、すがすがしい気持ちへと変わっていきます。

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