Vol.40「“物を作り出すということ”」

はじめまして。
イラストレーターの川端隆嗣と申します。
円生院さんとは、父が経営している洋菓子店「川端風太朗」が近所にあるという事と、円生院さんの奥さんが学生時代に姉妹店でアルバイトをしていたご縁から、今回こちらで書かせていただくことになりました。
私は昔からお絵かきが好きで、裏が白いチラシをより分けるのが子供の頃の日課でした。
画材はボールペン。
つるつるした素材のチラシに鉛筆は相性が悪いため、自然とボールペンで描くようになったようなのですが、毎日描くためインクの減りが異常に早く、親から文句を言われたり、ご近所さんから大量のボールペンをもらって大喜びした記憶があります。
そんな私にとって、真っ白い100枚もの紙がまとまっている「らくがき帳」は誇張無しで輝いて見え、本当に大好きでした。
幼稚園に行くのが嫌でぐずっていたら、母から「らくがき帳を買ってあげるから」と言われて「じゃあ行く」と即答したほど大好きでした。
その大好きならくがき帳を、今も絵のラフを描くのに使っています。
らくがき少年がそのまま大人になった、というところでしょうか。
他の子よりたくさん絵を描いてきたおかげで子供の頃から絵が得意で、絵を貼り出してもらえたり、賞をもらったりしていましたが、中学生になると周りのレベルが上がって私の絵も並程度に。
それが悔しくて、高校生の時に美大受験のための絵画塾で学びました。
うまく描けなくて苦労もしましたが、今にして思えば、その絵画塾での経験が色々な面で役に立っているなと感じます。
教えてもらうだけでなく、自分なりの何かを作り出す大切さを学びました。
とはいえ、常に新しくて素晴らしいものを作り出すのはとても難しく、作品が増えれば増えるほど以前作ったものに似ているものやレベルの低いものは、描く前に作者自身が却下してしまうので、自然と描けなくなってきてしまいます。
以前有名なジャズピアニストの方にお話を聞いてみたところ、同じように悩んでおられたので、何かを作り出す人は皆そうなんだな、と少し気が楽になりました。
結局、悩みながら作り続けるしかないのだなと思います。
そんな風に悩みながら描いているイラストですが、なるべく楽しく、美しく感じてもらえるように描いています。
これは私自身の好みでもあるのですが、あまり陰鬱とした絵は好きではありません。
とはいえ、ただ楽しく美しいだけのものでは薄っぺらい作品になってしまうので、見ていただいた方に、楽しい、美しい、かわいい、怖い、など、色々な感情を持っていただけるように描いているつもりです。
私が考えたストーリーなど無視して、見ていただいた方が自分だけの物語を作り出していただけたら、とても嬉しいですね。
ライフワークにしている「かみさまシリーズ」は色々な神様を自分なりに描いていくシリーズです。
色々なテーマで自由に描けるかな、と思って描き始めたシリーズですが、日本には八百万の神というユニークな考え方があり、ああいった庶民的な神様像が、なんだかのんびりしていて好きですね。
私が描いているかみさま達も、これといって強い力があるわけでもない「ただそこにいる神様」というつもりで描いています。
絵柄としては色々な物で構成したごちゃっとした絵です。
自分なりにそのごちゃっとした中にも、まとまりを持たせるようにしておりますが、この辺が父の作るケーキに似ているな、と感じることもあります。
例えばお店で売っている「抹茶ムース」にしても、抹茶のムースだけでなく、中に生地や栗の渋皮煮などが入っており、食べ進めると色々な味が楽しめるように作られています。
私同様、父も人に楽しんでもらいたいと思う気持ちが強いのではないでしょうか。
まだまだ何かを成したわけではありませんが、人に楽しんでもらえる作品を描いて、それが何かにつながっていけばいいなと思っております。

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