Vol.7 「茶筌の里」-生駒芳弘さん

「生駒市高山竹林園の生駒と申します。」と、来園されたお客様にご挨拶申し上げますと、たいがい笑いがおこります。
さほど面白いセリフとも思いませんが、初対面の緊張感を取るために、ちょくちょく使わせていただいております。
この度は縁あって寺子屋新聞のお話をいただきましたにもかかわりませず、出だしから冗談のようなことを書きまして、申し訳ありません。
これも読者の皆さんと紙面での初対面の緊張感を取るためとお許しください。
さて、ここで私の勤務先の高山竹林園のご案内をさせていただきます。
平成18年に開通した近鉄けいはんな線の学研北生駒駅から北へ約2キロ、富雄川沿いに上るとあちこちに「茶筌」「茶道具」の看板が目に飛び込んできます。
奈良県生駒市の北部に位置するここ高山地区には現在、日本製の茶筌の9割以上を生産する日本で唯一の「茶筌の里」があります。
1月から2月にかけてこの地の田畑でおこなう竹の寒干し風景は大和高山の風物詩となっています。
わたしは茶筌をはじめ生駒市の伝統的な地場産業である竹製品のPRや振興とともに市民の文化と教養を図るため生駒市が創設した「高山竹林園」の所長をしています。
ここには美しい庭園や資料館、茶室などがあり、一年を通して茶筌の制作実演見学や抹茶体験、竹林見学の方だけでなくお茶会や研修会など沢山の方々がここをご利用くださっています。
また茶筌、茶道具、竹製品の展示室もあり、初心者のための茶道教室(年2回、1回10講習)や茶筌や茶杓づくり等の講座も行っています。
この施設を多くの方々にご利用していただき竹文化、お茶の文化に触れていただければ幸いです。
私のことを申しますと、生駒市職員として市役所勤務をしていたのですが、平成21年4月の人事異動で高山竹林園に着任することとなりました。
高山竹林園への異動は、まるで予想していませんでしたが、内示を受けたとき、なにかうれしい気持ちがわいてきました。
なぜなら緑の多い庭園とその中にある落ち着いた雰囲気の資料館で仕事ができるという喜びでした。
実際に勤務してみると、いろんな発見がありました。
実は恥ずかしい話ですが、それまで茶筌の実演を見たことがなかったのです。
実際に見させていただくと、想像をはるかに超えた見事な技で、ただただ感動でした。
「これは芸術作品ですね。使うのがもったいない。」と、まるで素人まるだしの感想を茶筌師さんにしますと、
「これは消耗品です。いくら伝統に基づいた優れた技術であっても、飾っておいては意味がありません。使っていただいてこそ価値があるのです。」という意味合いのことをおっしゃいました。
なるほどと思いました。
この新聞の読者の皆様も茶筌を大いに使って、お茶を楽しんでいただければと存じます。
お茶だけでなく、カプチーノなど工夫をしていろんな活用をしていただければ幸いです。
茶筌の製法は、長い歴史の中でずっと一子相伝がまもられてきました。
人に技法を見られないために、夜なべで仕事にかかっていたそうです。
だから、他の地域に技法が伝わることなく、高山地区で全国の9割以上の生産する「茶筌の里」になったのだと思われます。
今は、より茶筌の振興を図るため、実演を見学できるようになったのは、見学者の皆さまにとって幸いなことだと思います。
茶筌の実演は、毎月第1・3日曜日(12月と1月第1日曜日は休止。
5月の連休や「竹あかりの夕べ」でも実演予定。
問い合わせ高山竹林園☎0743-79-344まで)午前10時~11時30分午後1時~2時30分に行われます。
どうぞ一度お越しください。
良い茶筌はお茶をたててみると分かるといわれます。
そろい整った竹の穂先で茶をたてると、自然と心が静まります。
小さな茶室で自分自身を見つめ直す、世の移り変わりの早い今だからこそわび茶の精神が求められているのではないでしょうか。

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