はじめまして。銅を打ち出してオーダーメイドの看板・表札・オブジェなど、色々なものを作っています。一枚の板に金鎚と鏨(たがね)を使って表と裏から叩き出し、レリーフを作る技術の事を鍛金(たんきん)と言います。子供の頃から、ものを作る事が大好きでした。高校生の時に初めて金工に触れ、彫金教室に通い始めました。こんなに硬い金属が、曲がったり、くっついたり・・そうすると次は叩いて伸ばしてみたくなりました。私は金属の中でも‘ねばる’銅が大好きになり、鍛金の道に魅かれていきました。その後、アクセサリーの製造・企画の仕事をしていましたが、鍛金を深く知りたい気持ちから、勤め先を辞めてイタリア、フィレンツェに渡りました。住んでいた場所の近くにあった 小さな銀細工のお店を経営する女性から、金属の叩き方を教わりました。そして彼女の師匠、Bino Biniの事を知り、紹介してくれるようにお願いしました。Binoは、作品を作る事だけでなく、工具に対してのこだわりも強く、ひとつひとつの鏨に命を吹き込みました。技術を教えてもらえるまでに、まず鏨の作り方で3か月以上も要しました。
師達が教えてくれたのは技術なのですが、私の日常の中で、さりげなくヒントを与えてくれます。
鍛金師Binoの教え:「よし!と思ったらもうこねくり返すな」
ものづくりは、最初から最後まで、フラットに楽しい、なんて事は無いと私は思います。苦手な工程・面倒くさい作業・そして無心になる時間・・色々な段階を経て、完成の瞬間はわたしにとっての至福の時です。
それを得るには、よし、と思える絶対の前段階があってこそなのです。当たり前すぎる事なのでしょうが、私が身体で感じた答えです。毎日の生活の中ででも、考えが行き詰った時、ふと思いだして不思議と気持ちが軽くなります。
彫金師 寺井先生の教え:「とにかく磨け」
磨く作業というのは、荒い目のヤスリから始めて順に目を細かくしていき、最後は布などの目の細かい繊維で磨く長い長い工程です。1つでも手を抜いて結果を急ぐと、顕著に目をつぶった部分は「ここだよ~」とアピールし続け、最後まで足を引っ張るのです。心を込めて磨くと、確実に結果は光りだします。これは些細な日常の出来事によく活用します。うまく出来なかったら、結果にしょげるより、うまくいかなかった理由を自分は知っていると認めて、開き直ります! 
ひとつのものを作り上げるには、いくつもの要素が必要なのだと思います。もちろん技術的なこと、そしてセンスやひらめき、私の場合もうひとつ大切にしていることは、今していることが「大好き」だと感じて、進んでいる事です。師達からの教えを受けた当初は、頭で理解はしているものの、作品に表現できるまでには、すごく時間がかかりました。もしかすると表現なんてほんの少ししか出来ていないかもしれません。なぜなら知識が形になるためには、私には失敗することが不可欠なようで、その痛い思いが自分なりの工夫や悩んで解決するまでの道のりを作るからです。そうやって教えは私のものになっていくのだと思います。

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