はじめまして。私は兵庫県西宮市で和ろうそくを製造しております有限会社 松本商店松本恭和と申します。
円生院副住職の宥亮さんとは、清荒神清澄寺さまの天堂番をされている頃から、新年のご奉仕を通じ御縁を頂きました。ありがとうございます。

えっ?和ろうそくは駅伝?いきなり突拍子もない出だしでスイマセン・・
和ろうそくの原料は植物のハゼの実の油から抽出した蝋・・・木蝋(もくろう)を使用します。このハゼの実を契ってくれる人を契り子さんと呼ぶのですが12月から1月の寒風が吹く頃、10m以上の木に登り危険を顧みず収穫していきます。ハゼはウルシ科ですので樹液にはかぶれる成分も含まれています。農閑期の手内職として室町時代から存続してきた作業ですが今では、高齢化による後継者不足が深刻な課題です。

こうして九州や四国を中心に集められたハゼの実は、福岡、長崎にある製蝋所に送られてきて一枚の蝋になります。実を蒸して柔らかくし種と皮の間にある果肉を圧縮機で絞ると鶯色をした蝋の液体が出てきます。この蝋の事を木蝋又はハゼ蝋と呼んでいますがお相撲さんが使うビン付油はこの蝋に椿油を混ぜ、ひまし油を混ぜるとポマードになります。
その他、口紅や乳液、ハンドクリーム、文房具ではクレヨン、色鉛筆、医薬品では座薬や軟膏などあらゆる分野で活躍してくれています。
全国で20件ほどになった私たち、和ろうそく屋にとってもなくてはならない原材料です。

一方、和ろうそくの芯は和紙の上にい草のズイから抽出した燈心草を巻いたものを使います。奈良県安堵町でおばあちゃん達が熟練の技で芯づくりをしてくれていますがこの芯の良し悪しがろうそくの燃焼に大きく影響します。心臓と同じです。灯芯は非常に切れやすいのですが、そうなると蝋の吸い上げが悪くなり蝋ダレを起こしきれいに燃えてくれません。なぜこの地域で芯づくりが行われるようになったかというと、奈良県は昔から墨づくりが盛んでした。実はこの墨は菜種油に灯芯を浸し、そこから出るススを膠で固めて造っていたからだそうです。

このように沢山の人の手の温もりの残った現材料というタスキを受け継ぎ私たちはろうそくを造ります。溶けた蝋を手ですくい塗っては乾かしの作業を繰り返していきます。竹串に芯をさし、自分の手の中で少しづつ大きく目的の太さまで仕上げていきます。
仕事場は、86歳の親父と向き合うようになっているのですがその造る姿は穏やかで蝋と遊んでいるようにも見えます。一方、私は眉間にしわを寄せまだまだろうに遊ばれているようです。 親父はろうそくを出荷する気持ちを「娘を嫁に出す気分や」と表現します。うれしいけどちょっと寂しい・・・そんな気持ちでしょうか?

いよいよアンカーのお寺さまやご参詣の方へタスキが繋がれていきます。

ろうそくが一番輝くとき・・・それは火をつけてもらい自らが光源となり周りを明るく照らす瞬間です。
そして願わくばその灯りが皆様の心に火を灯し豊かなる日々を送られん事を願いつつ・・・。