昨年、2014年の11月15日より猊座に就かせていただくご縁を頂いた中西啓寶と申します。
いよいよ本年はお大師様が高野山をご開創になり1200年に当たります。この開創法会は50年に1度執り行われ、高野山内では4月2日から5月21日までの50日間、毎日3回から4回の法会が厳修されます。その期間中には真言宗各派の管長様方がお参りされます。皆様方も是非この千載一遇の機会にご来山ご参拝いただくことをお待ち申し上げております。 普段あまりお大師様との関わりの無い方にとっては高野山とのご縁を持つ絶好の機会、また真言宗壇信徒の皆さまは常日頃からお大師様の御徳に感謝されておられることと存じますが、さらにその気持ちをよりよく深めていただく好機でございます。
高野山は国、社会の安寧とそこに住まう人たちの幸せの為に祈りをささげる場所として、そして密教という不滅の法灯を輝かすための後継者の修行の道場として1200年前より始まりました。
お大師様が高野山という1000メートルもの高い山の上にうっそうとした雑木林を拓かれ整地し、諸堂を建立されたみこころ、思いやり、ご苦労は察して余りあります。京都には国からいただいた東寺という立派な建物があるにもかかわらず、あえてこの不便な山の中に伽藍を建てられたのは深いお考えのことです。 八葉の峰々に囲まれた高野山はこの世の極楽浄土の実現であり、これによって1000年も前より天皇様はじめ、皇族、貴族、武士、庶民にいたるまで、宗派を問わず列をなして登山し参拝され、自身の健康と幸せを祈りました。
お大師様ご入定の地である奥の院御廟から一ノ橋までの2㎞の参道沿いには約20万基を超える墓碑や記念碑が立ち並んでいます。死後の永久の安らぎの為にお大師様のおひざ元へ競って納骨しお墓を建てられ、世界に稀な霊場となりそれが現在まで続いています。
また昨年は高野山が世界遺産に登録され10年になりますが、他に類例のないと認められたその資産内容は紀伊山地の霊場と参詣道という祈りへの道のりであります。1200年前より現在に至るまで高野山へのお参りの方々の信仰の篤さが見止められ、特に国の史跡ともいえる高野山の聖地、奥の院までの道には1200年に亘るお大師様への敬慕が如何に深かったかが伺われます。
お大師様の記された『秘蔵寶鑰』という文章の中に『菩薩の用人は、みな慈悲を以て本とし、利他を以て先とす。よくこの心の住して浅執を破して深教に入るるは利益もっとも広し』というお言葉があります。「菩薩は慈悲の心で他の者の幸せを優先する。この心で迷いを晴らすことが出来れば最も大きな幸せが得られる」ということです。 私たちは何事も先ず他の者への慈悲の心が一番肝心でそのことを頭に置いて行動すべきであります。利他を以て先とすることは、自分のことは後にして他の人々が喜んでもらえることを、また苦しい時には心の助け、力での助けを恩に着せずに心安くしてあげることが大切と諭されています。
この菩薩の境地である"他を先ず思いやること"は簡単なようでとても難しいことですが、最近の国の国民統計を見ると東日本大震災以来、"何か人の為にやりたい"という人が"自分さえよければ"という人の数を上回ったそうです。
こういった思いを胸中に持し、開創1200年のこの大法会では1人でも多くの方々にお大師様の御心に触れていただきるようお待ち申し上げております。